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ミルトン・ナシメント「Travessia(トラヴェシア)」 (1967)

ミルトン・ナシメント「Travessia(トラヴェシア)」 (1967)_a0030240_23363378.gif1. トラヴェシア
2. トレス・ポンタス
3. 信じる心
4. イルマォン・ジ・フェー
5. 塩の歌
6. 風車
7. モーホ・ヴェーリョ
8. ジラ・ジロウ
9. マリア、ミーニャ・フェー
10. 十月


自分の生まれた年にどんな出来事があったか、どんな曲が生まれ聴かれていたのか、ボクにはとても興味がある。ブライアン・ウィルソンがアルバム「スマイル」の制作を断念したのはこの年の春で、ボクの生まれる直前までビルボードのシングルNo.1に座っていたのはヤング・ラスカルズの「グルーヴィン」だったし、その翌週のアルバム・チャートのトップには「サージェント・ペパーズ」が登場...

と、どうしてもアメリカ・イギリスを中心に見るとそういうことになるわけだけれど、ブラジルでもうれしいことが起こっていました。この年、テレビ局の主催する国際ソング・フェスティバルで2位(トラヴェシア)と4位(モーホ・ヴェーリョ)を獲得しデビューが決まったアーティストが、ミナス・ジェライス州出身の若者、ミルトン・ナシメントだったのです。

ミルトンの声を初めて聞いたその瞬間から、聴いているこちらがどこか遠くへ飛んで行ってしまいそうな、宇宙へまでも連れて行ってくれそうなその声の虜になりました。“ブラジル音楽の宝”と言われるミルトンとボクが出会ったのは、実はムーンライダースのアルバム「ヌーベル・バーグ」。ライダースはこのアルバムの最後の曲として「トラヴェシア」に新しい日本語詞をつけて歌っていました。オリジナルとは全く違う歌詞で、もちろんボーカルもミルトンではなかったわけですが、ライダースが歌うその曲から最初に受けた印象と後で少しずつ知っていったミルトン自身の魅力とは驚くほど一致していたのです。それは、曲自身が持つ魅力のなせるわざだとボクは信じていますが、そんな魅力をたたえた曲、ボクの心を捕らえる「曲」にブラジル人のアーティストのものが多いのは偶然ではないと思います。アントニオ・カルロス・ジョビンはもちろん偉大ですが、ボクの心の扉を開いたのはこのミルトン、そしてほぼ同時期に出会ったジョアン・ジルベルトでした。このふたりに出会ったことが、その後かけがえのないアーティストたちとの出会いへと導くものだったとは、18歳のボクはまだ知りませんでした。

歌謡祭での入賞から、ミルトンの長年の夢だったアルバム制作の道が開かれ、そして出来上がったのが昨年初めてCD化されたこのアルバム。若さいっぱいのミルトンの才能が満ち溢れています。このアルバムのためにプレゼントされた、ミルトンの友人たちからの言葉を紹介して終わりましょう。
『ミルトンの音楽は美しく、真面目で、静かだ。まるで彼自身のように。』エドゥ・ロボ
『ミルトンは常に、僕にとっては明らかに、僕より遥かに偉大なミュージシャンだ。』カエターノ・ヴェローゾ

しばらくの間、ブラジル人のアーティストを紹介することにします。
by copain-eiji | 2005-05-11 00:59 | ■CD


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