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ポール・サイモン「イン・コンサート」(ビデオ/1981)

a0030240_3405383.gif1. Me and Julio Down by the Schoolyard
2. Still Crazy After All These Years
3. Ace in the Hole
4. Something So Right
5. One-Trick Pony
6. Jonah
7. Fifty Ways to Leave Your Lover
8. Late in the Evening
9. American Tune
10. The Boxer
11. The Sound of Silence

気がついたら、ほぼ一ヶ月も更新してませんでした。すみません。
さて、ビートルズと来たら次はこの人、ポール・サイモンです。

ロックンロール・バンドのビートルズにぞっこんだった小学生の頃のボクにとって、フォークというのは基本的に「軟弱なもの」としか映りませんでした。中でも、ビートルズと並べて語られることの多かった「サイモン&ガーファンクル」は、アート・ガーファンクルの美声もあって、ボクの中では「軟弱」の代表格であり、よく知りもせずに「絶対好きにはならない」と決めていたほどでした。そんな認識が変わるきっかけとなる事件が、中学2年のときに起こりました。

それは、ニューヨークのセントラルパークに50万人を集めた「サイモン&ガーファンクル再結成コンサート」。噂は聞いていて、「ごっ、ゴジュウマンニンかよぅっ!」とかなりのけぞっていましたので、それがTVで放映されると聞いて、この歴史的な出来事は見ておかなきゃいけないな、となぜか思ったのでした。そのころ家に来たばかりのデッカいビデオテープレコーダーで録画し、結局何度も何度も繰り返して観ることになりました。「案外いい曲が多いじゃないか」と思ったのと、その放映では歌詞の対訳が曲に合わせて映し出されていたので、観るうちにポール・サイモンの歌詞の世界にすっかり引き込まれてしまいました。明らかに、ビートルズやボクの思っていた“軟弱フォーク”とは違う何かがそこにあったからです。以来、ボクの尊敬するソングライターの筆頭に、ポール・サイモンは君臨し続けています。

このビデオは、『ワン・トリック・ポニー』(残念ながら興行的には大失敗に終わった、サイモン脚本/監督/主演映画、そして同名のサントラ・アルバム)発表後で、再結成コンサートの約一年前にフィラデルフィアで行なわれた、サイモンのソロ・コンサートの模様を編集したものです。ポールの独創的なギターと「スタッフ」の面々を中心に編成されたバンドのタイトな演奏にのって、名曲の数々が演奏されます。このアルバムとライブに、ポールが相当の自信を持っていたであろうことがわかります。しかし、結局その自信は売上にはあまり反映されず、セントラル・パークでのチャリティ・コンサートを持ちかけられた時は半ば自信喪失で、「S&G」でなら引き受ける...となったそうです。なんとも人間クサい、彼を身近に感じさせるエピソードです。

ポール・サイモンの魅力をひとことで言うと、そんな人間クサさを感じさせながら、辛辣な社会批評を備えた歌詞に、特別に巧くも美しくもないボーカル。実はひどく高度な作曲+ギター技術を備えた曲でありながら、いつでも誰でも作れそうな簡単な曲に聞こえてしまうという、そのアンバランスさです。それは、サイモン自身の身の処し方をそのまま反映しているかのようです。

誰もが羨む成功、そして才能を持ちながら、どこまでも皮肉屋で「物事がうまくいくことに慣れてないんだ」(Something So Rightより)と言うひとりの男。「たったひとつの芸しか持たない馬」(One-Trick Pony)であり、「歌に飲まれた、若気の至りの生き残り」(Jonah)だと、自分を嘲るひとりの男。おそらくそれらは、自分がユダヤ系アメリカ人であるという自覚と、アメリカという国を愛しつつ、それゆえに国の行方を憂いているという当時の状況と無関係ではないと思います。代表曲「サウンド・オブ・サイレンス」が、自分の思惑を大きく外れて多くの人々に受け入れられたことを、何も考えずに利用することをせず、逆にそれゆえに抱えることになった苦悩と向き合い続けている彼に、人間としての誠実さを感じるのです。そして、ボクの感じるそれらの魅力のピークがこの時期であったことは確かです。

現在は、このビデオ/DVDの日本版はなく、アメリカ版の「Live at Tower Theatre」が出ているのみです。もちろん日本語字幕はないでしょう。残念です。
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by copain-eiji | 2004-08-24 03:39 | ■コンサート+ミュージシャン